アサーション(11)聴く
アサーティブであるために必要なこと、なんて言って思いつくことをずらずらと並べていくと、「アサーティブであることって、やたら難しいじゃないか!?」となってしまいそうなのですが・・・。
答えは・・・、イエスでもあり、ノーでもある。
多くの人にとってはそう難しいことではなくて、アサーティブであることを心がけていくだけで充分に、安心できる人間関係や、信頼できる人間関係を作ることができるように思います。
難しいのは、地位や権力を「非常に強い力」と思い込んでいて、人格に及ぶような服従を強いることをする人達自身(悪い意味での偉い人)、それからそういう人達に対してコミュニケーションをとる時です。
「この人達」及び「この人達に対するコミュニケーション」では、「聴く」ということがほぼ成り立っていないと思われます。コミュニケーションの学びでは、音がきこえてくるという感じの意味が強い「聞く」と積極的に話などをきく「聴く」を区別し、さらには「傾聴(けいちょう)」という言葉を使います。(ここでは「聴く」を使って話を進めます)
「聴く」と「話す」によって話し合いが行われますが、その時に必要な「聴く」とは何なのか?(長くなりすぎないように今日は、エッセンスだけ)
聴くとは、まず第1に、相手が何を「言いたい」のかを「わかろうとする」ということです。第2に、相手がどんな「気持ち」でいるのか「わかろうとする」ことです。第3に相手に話したいことを話させる技術だということです。(具体的なことは別の機会に書くことにします)
ちょっと違った方向から説明してみますね。相手が使った言葉に出てきた「海」も「山」も「困った」も「苦しい」も「長い列車」も「高い建物」もあなたが想像したものと全く異なったものである可能性があることを知りながら、そして確認をしていかなければ、「聴く」にならないということです。
〈例〉 海に行ってきました→ ・聴き手:砂浜 ・話し手:磯
〈例〉 登山に誘われて困った→ ・聴き手:坂道はきついから 話し手:スギ花粉アレルギーなので
相手が何をした時に何を感じたのかに寄り添っていくことが安心感や信頼感を生み出し、さらに話を深めていくことにつながっていくということです。こちら側の知りたいことをきくだけのきき方は、極端に言うと、取り調べの「訊問(尋問)(じんもん)」になってしまい、相手は話させられている感覚になり、そこには安心感は生まれません。
悪い意味での「偉い人」はこの「聴く」ということが非常に苦手であるように思えます。そしてこの「偉い人」による訊問のような話し合いの中では、相手側も反発が先行して素直に「聴く」が難しくなってしまうように思うのです。
聴くとは、例え自分と違う意見だとしても、相手の言おうとしていることを一旦は受けとめること。「(私とは違う意見のようだけれど)あなたは、このことに関して、そのように考えているということなのですね」
「聴く」ということを基本として、相手を尊重する態度、そしてお互いを尊重する話し合いが生まれてくるのです。
しばらく前のこと。コミュニケーションの話の中で、「きく」という字は他にどういう字がありますか?と人に尋ねた時、僕の期待していた「きく」は、「聞く、聴く、訊く」の3つだったのですが、それは説明不足だった僕の思い込み。出てきたのは薬が「効く」。草かんむりの「菊」・・・・。
「そうではなくて・・・」と説明し直すのも一手ですが、「なるほどね。それは思いつきませんでした。きく、って言葉たくさんあるんですね・・・。ありがとうございます。他には?」と、冷や汗ぎみに対応したのでした。
失敗から学ぶ。やってみなければわからないことがある。なんて思いながら、みなさんからの言葉を聴く耳を鍛えていきたいなと思っています。
ということで、最後まで読んでいただきありがとうございました。
NPO法人ぐんまアサーションラボ(ぐんまアサラボ)高橋祐紀